不動産の売却時には様々な諸経費が必要になりますが、税金もそのうちの1つ。不動産取引における税金について、節税については押さえておくべきポイントとなります。税法はほぼ毎年改正されるので、売却成約の時点で専門家に確認することも重要です。もちろん弊社の担当者にご相談いただいても構いません。ここでは不動産売却時にかかる税金の種類と内容をご説明いたします。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却した時に発生した利益「譲渡所得」にかかる税金の事をいいます。「譲渡所得」が発生した場合は、その翌年の3月15日までに確定申告をする必要があります。不動産の譲渡所得税金は、事業所得や給与所得などの所得と分けて(分離課税)計算します。原則として、事業所得や給与所得などの総合課税の所得と通算して計算することはできません。ただし、一定の条件を満たした場合は譲渡損失を総合課税の所得と通算することが認められています。区分の仕方や条件が色々と定められている譲渡所得税ですが、まずはさらっと目を通しておきましょう。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、不動産を売却した金額から取得費(*1)・譲渡費用(*2)を差し引いて計算します。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費(*1)+譲渡費用(*2))
取得費(*1):取得費とは、売却した不動産を購入(取得)した際の購入代金や、購入手数料などの資産の取得にかかった金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額のことをいいます。また建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。建物の取得費が不明な場合や、実際の取得費が売却価額の5%よりも少ないときは、売却価額の5%を取得費(概算取得費)とすることが可能です。
譲渡費用(*2):譲渡費用とは、不動産の売却時に要した費用のことをいいます。仲介手数料・売買契約書の印紙代・測量費・解体費用等、売却時にかかった全ての費用を合計します。
所有期間による区分(長期譲渡所得と短期譲渡所得)
譲渡所得は、所有期間(*1)によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分され、税率も異なります。また自宅の売却においては一定の条件を満たした場合、軽減税率や特別控除の特例もあります。まずは所有期間による区分を見ていきましょう。
所有期間(*1):所有期間とは、土地や建物を取得した日から所有していた期間をいいます。この場合、相続や贈与によって取得したものは原則として、被相続人や贈与者から取得した日から計算することになっています。
区分 |
短期 |
長期 |
期間 |
5年以下 |
5年超 |
10年超所有軽減税率の特例 |
居住用 |
39.63% (所得税30.63% 住民税 9%) |
20.315% (所得税15.315% 住民税 5%) |
- 課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%
(所得税10.21%・住民税4%)
- 課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%
(所得税15.315%・住民税5%)
|
非居住用 |
39.63% (所得税30.63% 住民税 9%) |
20.315% (所得税15.315% 住民税 5%) |
(注)上記税率には、復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せされています。
居住用財産譲渡の軽減税率
自宅を売却した際に、譲渡所得の税額を通常よりも低い税率で計算できるという特例です。具体的な税率と計算はこちら。
①譲渡所得6,000万円以下の部分=譲渡所得×14%(所得税10%+住民税4%)
②譲渡所得6,000万円超の部分=(譲渡所得-6,000万円)×20%(所得税15%+住民税5%)
税額は、①と②をたした金額です。
この特別控除を受ける条件は以下の通り。
- 現在主として住んでいる自宅であること。(その敷地や借地権を売る場合も含む。2つ以上居住用の家屋がある場合は、主として居住している1ヵ所のみが特例の対象になる。)
- 売主様と買主様の関係が配偶者や親子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと。
- 売却した家屋や敷地が居住用財産の買換え特例などの適用を受けていないこと。
(※居住用財産の3,000万円の特別控除の特例とは併用可能)
- 売却する年の1月1日において、家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
- 売却する年の前年及び前々年に、居住用財産の軽減税率の特例を受けていないこと。
- 居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却するとき。
3,000万円特別控除
自宅やその敷地を売却し、利益(譲渡所得)が発生しても、譲渡所得が3,000万円までは実質的に課税はしないという制度です。この特別控除を受ける条件は以下の通り。
- 現在主として住んでいる自宅であること。(その敷地や借地権を売る場合も含む。2つ以上居住用の家屋がある場合は、主として居住している1ヵ所のみが特例の対象になる。)
- 売主様と買主様の関係が配偶者や親子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと。
- 趣味や娯楽、保養のために所有する別荘のような家屋でないこと。
- 自宅を売却する年の前年及び前々年に、居住用財産の3,000万円特別控除または居住用財産譲渡損失の繰越控除特例の適用を受けていないこと。
- 居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却するとき。
注意点
- 住宅ローン控除との重複適用はできない。
- 共有の居住用財産を譲渡した場合、共有者の持分の範囲内においてそれぞれに適用。
- 3,000万円特別控除の特例と、軽減税率の併用は可能だが、これらの特例と買換え特例との重複適用はできない。
買換えによる居住用財産の売却益が出た場合の特例
自宅を買換えた場合、一定の条件を満たすことで、売却した自宅の売却益に対する税金を繰り延べることが出来ます。条件は以下の通り。
譲渡資産の条件
- 現在主として住んでいる自宅であること。(その敷地や借地権を売る場合も含む。2つ以上居住用の家屋がある場合は、主として居住している1ヵ所のみが特例の対象になる。)
- 居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却するとき。
- 売主様と買主様の関係が配偶者や親子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと。
- 譲渡資産の譲渡代金が1億円以下であること。
- 譲渡した年の1月1日で、家屋と敷地の所有期間がともに10年超であること。
- 譲渡人による居住期間が通算10年以上であること。
買替え資産の条件
- 譲渡日の属する年の前年1月1日から、譲渡した年の翌年の12月31日までに買替資産を取得すること。
- 譲渡した前年から、譲渡した年の間に取得した買替資産であれば、譲渡した年の翌年12月31日までに居住すること。また、譲渡した日の翌年の間に取得した買替資産であれば、譲渡した翌々年12月31日までに居住すること。
- 居住用部分の床面積が50㎡以上かつ敷地面積が500㎡以下であること。
- 中古マンション等の耐火建築物は、取得の日以前25年以内に建築されたものであること。(※新耐震基準に適合しているものはこの年数を超えてもよい。)
注意点
- 住宅ローン控除との重複適用はできない。
- 居住用財産を譲渡した年の前年分または前々年分において、居住用財産の課税の特例(*1)を受けていないこと。
居住用財産の課税の特例(*1):居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除、買換え特例、譲渡損失の繰越控除等のことをいいます)
譲渡損失の損益通算と繰越控除
自宅を売却して譲渡損失が生じた場合、一定の条件を満たすことで自宅の譲渡損失を給与所得や事業所得等の他の所得と一緒に計算し、損失を控除すること(損益通算)で税金を減額できたり、損益通算しきれない損失を翌年以降に持ち越すこと(繰越控除)ができたりするという特例があります。この特例には、「特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除」・「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」の2種類があります。それぞれの特別控除を受ける条件は以下の通り。
2つの共通条件
- 居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡するとき。
- 売主様と買主様の関係が配偶者や親子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等でないこと。
- 譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超えていること。
- 繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること。
- 譲渡年・その前年以前3年間に、他の譲渡損失繰越控除の適用を受けていないこと。
- 居住用財産を譲渡した年の前年分または前々年分において、居住用財産の課税の特例(*1)を受けていないこと。
居住用財産の課税の特例(*1):居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除、買換え特例、軽減税率の特例のことをいいます)
※2つともに住宅ローン控除との併用可能です。
特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除のみの条件
- 譲渡資産について10年以上の住宅ローンが残っていること。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除のみの条件
- 買換え資産について取得年・繰越年の年末に10年以上の住宅ローンがあること。
- 床面積50㎡以上(上限なし)であること。
- 譲渡資産譲渡の前年1月1日から翌年12月21日までに取得すること。
- 買換え資産取得の日から取得年の翌年12月31日までに居住すること。
印紙税
不動産取得時同様、売買契約書作成時にかかる税金です。
住民税
売却利益にかかる税金です。具体的には道府県民税・市町村民税(東京23区は特別区民税)など。